食べれなくなると点滴が問題になる
当院では、ガン末期や誤嚥性肺炎など終末期の患者さんを積極的に受け入れています。
死期が差し迫った患者さんをケアしていていく中で、食べれなくなった場合、点滴するかどうか?が良く問題なります。
その場合、「点滴はお勧めしません」と私はいつも説明しています。
確かに、何もしないのは見殺しにしているようでもどかしい気持ちになるが、実は点滴はすると患者本人が苦しくなるのです。
点滴をおすすめしない理由
点滴をおすすめしない理由は2つあります。
①浮腫み、痰、腹水の増加
癌末期などでは血管の透過性が亢進しており、点滴した水分が血管にとどまらず肺や、手足や腹水にたまってしまいます。
肺にたまると痰が増え呼吸が苦しくなります。また手足にたまることで全身が重くなったり、ふやけた皮膚が破けて褥瘡の原因となります。さらに腹水にたまる場合は、お腹がぱんぱんに張ることで、呼吸抑制や食欲の低下につながります。痰がたまって苦しそうにゴロゴロと喉を鳴らす患者さんを見ると本当に苦しそうです。
②身体拘束
点滴は手足に針を刺し、最低でも2,3時間程度拘束されることになります。意思疎通可能な患者さんならば耐えられますが、会話もできないほど認知機能の低下した患者さんではその間押さえつけることになり、精神的苦痛があります。
石井幸三医師が提唱する「平穏死」
そのほか、石飛幸三医師が「平穏死」を提唱するなど、医療業界の中でも点滴は推奨しない意見が多数あります。
石飛幸三医師の『人は「食べないから死ぬ」のではなく、「死ぬのだからもう食べない」のだ』という言葉は私の心に強く刺さりました。
長尾和宏医師(長尾クリニック院長)の手記でも似たような記載がありました。
〇死には本来、苦しみはない。特養ホーム常勤医が見た「平穏死」の穏やかな死に方(石飛幸三医師)
枯れたほうが楽です
実際、自分が受け持った患者さんは、最後は枯れるように亡くなっていますが、その顔をとても穏やかなものです。そのように穏やかに最後を迎えられる人が一人でも増えるといいですね。